2019/4/26静岡地裁  第1回旧優生保護法裁判

13:20行進
  4月26日(金)、14時30分~15時00分まで、静岡地方裁判所で、強制不妊手術の被害を受けた静岡県内のろう女性宮川辰子さん(ミヤカワ タツコ 仮名)の第一回裁判が行われた。静岡県強制不妊手術調査委員会(静聴協・静通研・士協会・サ連)は、裁判の開始が決定してから、会員向けサービス、静聴協LINE@や静聴協サイト、静聴協4月号機関紙にて、当日のデモ行進や裁判の傍聴について参加の呼び掛けを行った。当日は、弁護団、静聴協会員、賛助会員、他県からの参加者など52名が横断幕やプラカードを持ってシズウエルから静岡地裁まで行進した。注目の裁判であり、県内テレビ、新聞などのマスコミ全社が取材に訪れた。

13:50傍聴抽選
 抽選では、弁護団が事前に障害者に対する配慮を要望していたため、裁判所の職員が目で見て分かるようなカードの提示を行い、抽選から発表まで順調に行われた。しかし、手話通訳者の配置はなかったために、裁判所職員の話は伝わらないところもあり、静聴協事務局員が通訳を行った。デモ行進には参加できても、抽選発表で落ちてしまい、気落ちして座り込んでしまった参加者もいたが、複数の傍聴券を手にしたマスコミの記者が抽選券を譲ってくれたこともあり、全員が傍聴することができた。

14:30裁判
 初めて裁判を傍聴する会員が多く、みな緊張した面持ちで席についた。裁判長が入廷し「起立」で開始。弁護団が提出した訴状は50ページ以上あり、裁判ではその要旨を口頭にて主張した。私たち傍聴人にはその要旨が事前に配布されていた。傍聴席には手話通訳者2名が配置され、原告、被告、裁判官の声がはっきり聞きとれるようマイクの音量が調整されていた。
 原告側代理人の佐野弁護士が、旧優生保護法の問題点の総論である「旧優生保護法は生殖及び子を作り育てることを永久に剥奪し、優生思想に基づく点で憲法13条の自己決定権を侵害、優生上の見地から不良の子孫の出生を防止する目的で手術を実施したことは、人は法の下で平等に扱われる権利である第14条に違反するとして、優生手術は当然に違法である。」と述べた。続いて、平下弁護士が同法の違憲性と憲法上の権利に侵害について詳細を語り、中田弁護士は「国会の責任と厚生・厚労大臣の責任で、優生手術は国家の不法行為であり、優生条項を削除した後も特別な立法措置を取らなかったことは立法の不作為は違法、当時の厚労大臣らが同法改廃のための法案提出を行わず、違憲・違法な優生手術を実施したことに責任がある。厚生労働大臣は、優生条項が削除された後に速やかに被害を回復するための法案を提出する義務を怠り、その後も補償の予算案を作成する義務を果たさず被害回復のための措置を取らなかった。厚生労働大臣の公権力の行使は違法」と続けた。
 それに対して、国側の代理人は「相手の主張に対し、法の存在や通達は認めるが憲法違反については認否を行わない、被害者である宮川さんについては不知(知らない)」とした。最後に裁判官・原告・被告が次回の裁判期日を、7月12日(金)14時30分からと決め、15時00分に閉廷した。

15:00報告会
 裁判終了後、裁判所隣の静岡県弁護士会館に場所を移して報告会を行った。ここには手話通訳者とPC要約筆記者が配置された。報告会では大橋弁護団長があいさつの中で、「宮川さんはろうの夫とともに、懸命に生きてきた。旧優生保護法により、子供を産めない身体にされた。この苦しみは、万人が理解できるものではないが、社会・法廷で訴えることはできる。国の責任で、低劣な法律を作ったのだから、国が責任をもって謝罪しなければならないと思う。」と述べた。
 次に佐野弁護士らは、改めて訴状の要約について「①旧優生保護法は違憲を認めて改正されたが被害者の補償制度はない。②同法は対象者の憲法で保障する自己決定権を侵害し、平等原則にも違反。その様な違憲の法律に基づき実施された手術は当然違法である。③国会は優生保護法が違憲であり、改正された時点から現在まで補償の法律を作ってこなかった責任がある。④厚生及び厚生労働大臣は状況を把握し得る立場にありながら手術を続けさせ、かつ、優生保護法改正後に被害救済の措置を怠った責任がある。⑤救済法が成立したが、これで国の責任がなくなったわけではない。」など分かりやすく解説を加えたことで、参加者の多くが難解な裁判の用語や内容を理解でき、報告会まで出て良かった、勉強になったと話していた。
 また、この裁判を支援する静岡大学教育学部の笹沼教授は「国会は法律を作る権限を持つが、憲法によって与えられたもの。憲法は国民みんなで権利を守ろうという約束。手術というのは、合法であればいいが、違法なのでただの傷害行為。障害を持つ人たちの体を傷つけ健康を害すること。憲法25条の健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を侵害している。国は違法行為に賠償するだけでなく、健康を回復させる責任を持つ。国に責任を認めさせるまで、一緒に運動していきたい。」と語った。
 その後、しばらくマスコミの質問が続き、予定を過ぎて15時50分に報告会を終えた。 現在、同様の裁判が7地裁で起こされ、先行する裁判の結果で様々な影響も予想されるが、次回の裁判では国からの答弁書を受けてさらに主張が展開される予定である。